☆≪コラム≫インドネシア(ジャカルタ)の環境問題の現状について
2024/07/01
今回は、インドネシア(ジャカルタ)の各種環境問題(大気汚染・水質汚濁・廃棄物処理問題)についてコラムを書かかさせていただきます。
なぜ、インドネシアなのか?というと、昨年2023年に世界で最も大気汚染が深刻な都市TOP10(by IQ AIR)にランクインした事、またネットやyoutube等で取り上げられている世界一汚い川といわれるチタルム川がある事や、インドネシア国内だけではなく世界中のゴミが集まっている事も関係する廃棄物処理問題(ゴミ山問題)など、様々な環境問題が山積している都市という事、そしてなにより現地ジャカルタに約15年在住している知人に現状を案内していただける事になったからです。
さてインドネシアについて簡単に概要を説明すると、人口約2億7千万人「世界第4位」実質GDPランキングは2022年度で「世界17位」、そして総人口の約9割はイスラム教です。(ヒンズー教はわずか2%だが、バリ島は約9割がヒンズー教。)
経済成長以上に人口が急激に増加したインドネシアでは、前述した通り様々な環境問題がかなり以前から発生しています。
まずは大気汚染についてですが、急増した人口増加で対応しきれていない道路に自働車&バイクがひしめき合い、日常的に慢性的な渋滞がおきていて、大量に排気ガスが排出されています。
またインドネシアで現地生産している車は、エンジンや触媒が日本製と比べ低品質な物が多い為、CO2やNOxSOx、PM2.5などの有害物質の排出が多い事も大気が汚染される要因との事です。
さらにインドネシアの発電電力において、石炭の比率は約63%(2022年)との事で、こちらも大気汚染悪化に拍車をかけています。(電源構成別で、もちろん石炭がCO2排出量・PM2.5排出量ともに多い)
ちなみに大気汚染度を数値化したAQI指数は、伊勢で通常10~50(PM2.5 約10ug/m3)前後ですが、滞在時ジャカルタ周辺は100~250(PM2.5 約100ug/m3)超えという数値的にみても非常に汚染度が高い状況です。(到着翌日の朝に痛烈な咽頭痛を感じ、身をもって大気汚染を体験しました。)
つぎに水質汚濁に関して、急速に発達した経済成長を背景に、工場によっては廃水設備を持たずそのまま河川に流していた状況があった事もあり、2008年頃に「世界で最も汚染された川」と世界銀行が宣言するほど汚染されていた「チタルム川」があります。
日程の都合上そのチタルム川に行くことは出来ず、かわりにジャカルタ市内複数個所の河川を視察しましたが、ほとんどの場所で川底から気泡が大量に発生しているような状況で、視察したどの川も想像以上に汚染されている状況を目の当たりにしました。
(左の写真はジャカルタ市内中心部の川、気泡(ガス?)が全体に発生している。中央写真は郊外の住宅街の一部、ゴミは河川のある土手に日常的に捨てられている。右の写真は住宅街の側溝。)
最後に廃棄物問題についてですが、ここではいわゆる「ゴミ問題」について書きたいと思います。
ジャカルタ中心部は、現在は清掃員もいるおかげもあり(あまりにゴミがひどい状況だった為、雇用の確保も踏まえてゴミ清掃員が街中にいる)数年前からあまりゴミが落ちていない状況ですが、少し郊外にいけば路肩にはゴミが落ちていない場所がないくらいゴミが落ちています。
そして最大の問題は「ゴミ山」です。郊外のゴミ処理施設の近くへいくと、写真のように膨大なゴミが積みあがっています。ちなみにこの「ゴミ山」には、国内だけのゴミだけではなく海外(日本のゴミも中にあるとの事)のゴミも運びこまれているとの事で、この問題は複雑な要因が絡んでいるようです。
上記の様々な問題は、インドネシアに初めて行った自身にとってはかなり深刻な状況だと感じましたが、案内をしてくれた15年在住の方曰く「15年前の状況と比べると、現在はかなり改善されている」との事でした。
日本も昭和初期(昭和20~30年代)はゴミ・し尿は海洋投棄や土地投棄処分が蔓延し、蚊やハエの大量発生があり、衛生管理が必要な事から清掃法が昭和29年に制定(のちに廃止)され、衛生的な廃棄物問題は徐々に解消されました。
また高度成長期に伴う廃棄物の増加に対しても廃棄物処理法が昭和46年に制定され、そして廃棄物のリサイクルを始めとする適正な資源循環の必要性から各種リサイクル法や、循環型社会形成推進基本法が平成7年及び13年に制定され、現在のように自働車や衣服・日用品のリサイクルは様々な企業が参入し日本で浸透しています。
環境への配慮は地球全体の課題であり、私たち一人ひとりが行動して地球環境を守ることが求められています。
しかしながら分析機器・理化学機器はまだまだリサイクルは進んでいないと私は感じています。
環境分析測定が出来る機器を製造するメーカー、そしてそれらを使用する各種研究所・大学・研究機関、そして計量事業所のおかげで、今では当たり前のように安心な水・空気・食品を手に入れる事ができます。
それらの機器がリユース出来る状態なのに廃棄される、という事がないように弊社は引き続きリユース・リデュース・リサイクル(3R)に取り組み、廃棄物削減そして循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行に貢献し、微力ながら地球環境保全に取り組む必要がある、と改めて感じる視察になりました。
阪本